メインコンテンツへスキップ
わらび内科・糖尿病クリニック ロゴ
/
糖尿病専門医による最適な薬剤選択

糖尿病の薬物療法

蕨駅東口徒歩3分|内服薬・注射薬の詳しい説明

糖尿病の薬物療法は、食事療法・運動療法と並ぶ治療の重要な柱です。年齢・腎機能・肥満度・低血糖リスクなどを考慮し、糖尿病専門医が患者さまひとりひとりに最適な薬剤を選択します。

治療の基本

治療の3本柱

糖尿病の治療は食事療法・運動療法を基本とし、これらの生活習慣への介入が不十分な場合に薬物療法を加えます。

食事療法

総エネルギーの管理・バランスの良い栄養摂取。すべての治療の基本となります。

運動療法

定期的な有酸素運動でインスリン抵抗性を改善し、血糖管理を助けます。

薬物療法

食事・運動だけでは不十分な場合に追加。内服薬・注射薬など多様な選択肢があります。

このページで詳しく説明
飲み薬

経口血糖降下薬

経口血糖降下薬は作用の仕組みによっていくつかのカテゴリーに分かれます。患者さまの状態に合わせて組み合わせて使用します。

インスリン抵抗性改善薬

ビグアナイド薬 (メトホルミン)

2型糖尿病の治療で最初に検討される薬剤で、世界標準とされています。肝臓での糖産生を抑えて血糖を下げます。低血糖リスクが低く、体重増加が少ないとされています。腎機能低下時は減量または禁忌となります。

  • 低血糖リスクが低い
  • 心血管保護効果が期待される
  • 長期使用の実績がある
チアゾリジン薬 (ピオグリタゾン)

インスリン抵抗性を改善することで血糖を下げます。脂肪組織への作用が強く、血中脂質を改善する効果もあります。体重増加・むくみに注意が必要です。心不全の方には禁忌とされています。

  • 血中脂質の改善効果
  • 低血糖リスクが低い

インスリン分泌促進薬

DPP-4阻害薬

インクレチンを分解するDPP-4という酵素を阻害し、インスリン分泌を促します。血糖値依存的に作用するため低血糖を起こしにくいとされています。腎機能低下患者にも使用可能(用量調整あり)です。日本の糖尿病患者に広く使用されています。

  • 低血糖リスクが低い
  • 体重増加が少ない
スルホニル尿素薬(SU薬)

膵臓のβ細胞を直接刺激してインスリン分泌を促します。血糖降下作用が強い一方、低血糖・体重増加のリスクがあります。主に腎機能が保たれた中年以下の患者さまに使用されます。

グリニド薬

SU薬と同系統ですが作用時間が短く、食前に服用して食後血糖を改善します。低血糖リスクはSU薬より比較的低いとされています。

糖吸収・排泄調節薬

α-グルコシダーゼ阻害薬

消化管での糖の分解・吸収酵素(α-グルコシダーゼ)を阻害し、食後血糖の上昇を抑えます。食直前に服用が必要です。消化器症状(腹部膨満感・おならが増える)に注意が必要です。

SGLT2阻害薬

腎臓での糖の再吸収を担うSGLT2という輸送体を阻害し、血液中の余分な糖を尿中に排泄します。心臓・腎臓の保護効果も証明されています。体重減少効果が期待される一方、尿路・性器感染症のリスクに注意が必要です。

  • 心臓・腎臓保護効果
  • 体重減少効果

イメグリミン

新しい経口薬

2021年に日本で承認された新しいクラスの経口薬です。インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の両方を改善するデュアルな作用機序で血糖を下げます。ミトコンドリア機能の改善に関わり、膵β細胞を保護するとされています。低血糖リスクが低いとされています。

注射による治療

注射薬

注射薬にはGLP-1受容体作動薬とインスリン製剤があります。食事運動療法・内服薬に加えて使用することで、より良好な血糖コントロールが得られるとされています。

GLP-1受容体作動薬(注射)

毎日1回・週1回製剤があります

インクレチン(GLP-1)の作用を模倣し、血糖依存的なインスリン分泌促進・グルカゴン分泌抑制・胃排出の遅延・食欲抑制などをもたらします。強い体重減少効果があり、心血管保護効果も大規模臨床試験で示されています。毎日の注射型と週1回注射型があります。

強い血糖改善効果

HbA1cの大幅な低下

体重減少効果

肥満の2型糖尿病に特に有効

心血管保護

大規模試験で証明済み

GIP/GLP-1受容体作動薬

代表薬:チルゼパチド(マンジャロ®)など

新世代注射薬

GIPとGLP-1の両方の受容体を刺激することで、従来のGLP-1受容体作動薬を上回る血糖改善・体重減少効果が期待されています。臨床試験ではHbA1cの低下幅・体重減少幅ともに従来薬を上回るとされています。週1回の皮下注射です。

インスリン療法

インスリンは体内で唯一血糖を直接下げることができるホルモンです。インスリンを注射で補充して血糖をコントロールします。1型糖尿病(必須)や内服薬の効果が不十分な2型糖尿病の方に使用されます。作用時間によっていくつかの種類に分かれます。

持効型インスリン

作用が約24時間持続し、基礎インスリンとして使用。1日1〜2回注射します。

超速効型インスリン

食前に注射し、食後の血糖を管理。効果の発現が速く(約15分)、3〜5時間持続します。

混合型・中間型

速効型と持効型を混合し、注射回数を減らせるタイプです。

BOT療法について

内服薬に加えて持効型インスリンを1日1回注射する方法をBOT(Basal supported Oral Therapy)と呼びます。強化インスリン療法と比べて注射回数が少なく、低血糖リスクも比較的低いとされ、治療を継続しやすいとされています。

個別化医療

薬の選び方

すべての患者さまに効果的な薬は存在しません。患者さまの状態に合わせて、最も適切な薬剤・組み合わせを選択します。

年齢・生活習慣

高齢者は低血糖リスクを優先的に考慮します。仕事が忙しい方には服薬回数・タイミングの制限が少ない薬を選びます。

腎機能(eGFR)

腎機能が低下している場合、使用できない薬・減量が必要な薬があります。定期的なeGFR(推算糸球体濾過量)の確認が必要です。

心血管疾患の既往

心筋梗塞・脳梗塞の既往がある方には、心血管保護効果が証明されているSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬を優先的に検討します。

肥満度(BMI)

肥満がある方にはSGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬など体重減少効果が期待できる薬を積極的に検討します。やせ型の方は注意が必要です。

低血糖リスク

車を運転する方・高齢者・独居の方は低血糖リスクが低い薬剤(DPP-4阻害薬・SGLT2阻害薬など)を積極的に選択します。

合併症・併存疾患

腎症・心不全・脂肪肝などの合併症・併存疾患の有無が薬剤選択に影響します。複数の要素を総合的に判断して最適な薬を選びます。

よくあるご質問

薬物療法に関するよくある質問

薬を飲み始めたら、一生飲み続けなければなりませんか?

必ずしもそうとは限りません。食事・運動などの生活習慣の改善によって血糖コントロールが十分に改善した場合、担当医師の判断のもとで減量・中止できる場合もあります。ただし、自己判断での中止はせず、必ず担当医師にご相談ください。

インスリンの注射は痛いですか?

現代のインスリン注射針は非常に細く(0.3〜0.4mm程度)、ほとんどの患者さまが「ほぼ痛くない」とおっしゃいます。皮下脂肪に注射するため、神経をほぼ傷つけません。始めるにあたっては注射の方法を丁寧にご説明しますので、ご安心ください。

SGLT2阻害薬は尿路感染症を起こすと聞きましたが、本当ですか?

SGLT2阻害薬は糖を尿中に排泄するため、理論上、尿路感染症や性器感染症のリスクが上昇する可能性があります。水分をこまめに摂る・衛生管理に気をつけることでリスクを下げられます。症状が出た場合はすぐにご相談ください。すべての方に起きるわけではなく、メリットとリスクを医師と十分に相談した上で使用をご検討ください。

複数の薬を同時に使ってもいいですか?

はい、異なる作用機序の薬を組み合わせることはよくあります。作用機序が異なる薬を組み合わせることで、少ない用量でより良好な血糖コントロールが得られ、副作用も減らせる場合があります。組み合わせが好ましくないものもありますので、担当医師にご相談ください。

院長 張宇
院長からひとこと

糖尿病の薬物療法は近年目覚ましい進歩を遂げています。従来の血糖降下薬に加え、心臓保護・腎臓保護・体重減少効果それぞれに優れた新しい薬剤も登場しています。薬は「たくさん使えば良い」ものではなく、患者さまひとりひとりの状態に合わせて「最適な薬」を選ぶことが大切です。

「薬を減らしたい」「副作用が心配」など、ご不安なことはいつでも遠慮なくお話しください。一緒に、負担の少ない・続けやすい治療を考えていきましょう。

張 宇(ちょう う)
女性医師・糖尿病専門医・内科認定医

関連学会・参考情報

日本糖尿病学会 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)

関連するページ