糖尿病とは
インスリン(膵臓から出ている血糖値を下げるホルモン)作用の不足に基づく慢性の高血糖状態です。全くの無症状が多いです。のどの渇き、疲れやすい、体重減少といった症状を自覚することもあります。
1型糖尿病、2型糖尿病、甲状腺や膵臓疾患などに伴う糖尿病があります。治療方針を決める際、正確な診断が必要です。
糖尿病内科について
糖尿病内科は糖尿病の診察はもちろん、早期から糖尿病も含め、高血圧症、脂質異常症、脂質異常症、早期の慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などを診察、動脈硬化性疾患などの合併症を予防いたします。
糖尿病合併症
糖尿病の初期においては、健康診断などで尿に糖がでている、血糖値がやや高いと指摘はされることがあっても、そのころはまだ自覚症状のない方がほとんどです。この状態を数年放置すると持続的な高血糖によって全身の血管が障害され、合併症による症状が出現することがあります。
三大慢性合併症
01
糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害、三大合併症の中で最も早く出現します。
自覚症状がなく、振動や痛みを感じにくい場合があります。両手足のしびれ、四肢の痛みなどの症状が出る事もあります。筋肉の萎縮、筋力の低下や眼瞼下垂、複視といった症状が突然発症する病型もあります。
自律神経障害は症状に気が付きにくいですが、無自覚低血糖、立ちくらみ、便秘、下痢、発汗異常、排尿障害、勃起障害など多彩な症状が示します。
02
糖尿病網膜症(目の障害)
日本では失明原因の第2位です。
高い血糖の状態が長い期間続き、網膜の細小血管が傷害され異常を引き起こした状態です。眼底出血や浮腫が出現し、視力の低下の原因となります。早期の発見と加療は視力低下、失明を阻止するには重要です。見え方に問題がなくても、眼底検査で異常を指摘されることが多いです。治療の手遅れにならないように、定期的に眼底検査を行いましょう。
眼科受診を忘れた患者様に声をかけさせて頂きます。
03
糖尿病性腎症(腎障害)
人工透析になる原因の第1位です。
糖尿病大血管症
高血糖により腎臓の細胞における異常を引き起こし、初めは微量のタンパク尿が出現します。その後、多量の蛋白尿が持続し、さらに腎機能が低下していき、末期腎不全へ進展します。透析療法が必要な状態になります。 当院は尿および血液検査で定期的に評価を致します。血糖、血圧、脂質の包括的な管理で、糖尿病腎症の発症・進行の予防に努めます。
01
脳梗塞
糖尿病の患者様では、脳梗塞の発症リスクが2~3倍高いと言われています。予後不良の予測因子でもあります。
当院は定期的な頸動脈エコー検査が可能で、発症の予防に力を入れます。
02
心筋梗塞
心筋梗塞を含め冠動脈疾患、非糖尿病者に比較して発症頻度が2~4倍です。無症候性心筋虚血例も多いです。
当院は定期的な心電図、心エコー検査が可能、早期発見、早期治療できるように役に立ちます。
糖尿病性足病変
原因として糖尿病神経障害と末梢血流障害があり、足の潰瘍、壊疽になる事があります。重症例は下肢切断に至る事もあります。
当院は血糖、血圧、脂質の包括的な治療で発症のリスクを下げ、定期的足関節上腕血圧比などの検査、必要に応じ血管エコー検査、早期発見、早期治療で生活の質を守ります。
急性合併症
以下2つの急性合併症とも意識障害を引き起こす疾患で、緊急入院が必要で、主に輸液とインスリン投与の治療となります。
01
糖尿病性ケトアシドーシス
1型糖尿病患者が摂食不良でインスリン注射を自己中断や感染、心血管障害など合併を機かけに起こるのが多いです。
2型糖尿病患者が清涼飲料水を多飲も原因になる事があります。
血糖降下薬SGLT2阻害薬を使用する際、正常血糖ケトアシドーシスを引き起こす可能性があります。
02
浸透圧高血糖状態
高齢者に多く、感染や心筋梗塞などをきっかけに発症します。脱水と高浸透圧が病態の中心です。死亡率が16.0%と高いです。
糖尿病治療
糖尿病は、早期発見および早期治療、そして治療の継続が重要です。食事療法、運動療法は治療にとっては基本的な治療です。状態によって薬物治療が必要になってきます。一部の患者様は薬物治療を受けた後、食事療法、運動療法を守る上に薬を飲まなくても良い状態を維持ができます。糖尿病の治療を放置したり発見が遅れたりして合併症が出現してしまうと、生活の質の低下につながり、失明や透析などを来しかねません。
食事療法
当院では患者様の年齢や病状、食生活に合わせて、食を楽しめる食事療法を心がけています。
目標とする体重は年齢・身長・身体活動量・病態などを考慮し設定します。目標体重を目指すための適正総エネルギー量、併発症を配慮し栄養バランスが良い食材など、管理栄養士より詳しい説明を致します。
食事注意事項
- 腹八分目とする。
- 食事の栄養バランスを良くする。偏りの食事を避ける。
動物性脂質は控え、野菜、海藻などを多く摂る。 - 食べる順番を意識し、良く噛む。野菜→タンパク質→脂質→炭水化物の順が良い。
- 間食は控え、摂取する時は1日80kcalに超えないようにする。
運動療法
運動をすることで、血糖値の低下およびインスリン抵抗性の改善を図ります。
患者様の健康状態によって運動の適否があります。以下の状態は運動禁止また制限するが必要です。
1. 糖尿病の血糖管理が極端に悪い場合(空腹時血糖値250mg/dL以上、または尿ケトン中等度以上の陽性)
2. 増殖前網膜症以上
3. 腎不全の状態
4. 虚血性心疾患や心肺機能に障害がある
5. 骨、関節疾患がある
6. 急性感染症
7. 糖尿病壊疽
8. 高度の糖尿病性自律神経障害
当院は患者様の状態を確認した上、運動の提案を致します。
散歩、ジョギング、自転車などの有酸素運動と腹筋や腕立て伏せなどのレジスタンス運動があります。両方を合わせて行うのが効果的です。生活の中、階段の上り下り、買い物、家事をする事も軽い運動として取り入れる事ができます。
特に制限がなければ、1回20~60分、週3~5回以上、合計週150分以上の運動、活動しない日は連続2日以上超えないように、運動は食後1時間以内するのがより良いです。
薬物療法
当院は患者様の病態を確認、まず薬物療法が必要かどうかを評価、さらに糖尿病合併症の有無、薬剤の作用特性、患者様の生活スタイルなども考慮し、低血糖にならないように薬剤の種類や量を使用します。
薬の性質や作用機序によっては、以下のタイプに分けられます。
01
インスリン抵抗性を改善する薬剤
*ビグアナイド薬(薬剤:メトホルミンなど)
肝臓,筋肉や脂肪に作用、血糖値を下げます。高度の肝臓機能障害、腎機能障害、大酒家では使用しにくいお薬です。飲み初めに便秘、下痢の消化器症状を認める事があります。
*チアゾリジン薬(薬剤:ピオグリタゾン)
脂肪や筋肉でのインスリン抵抗性を改善します。副作用として、むくみがあり、腎機能低下、心不全では使用しにくいお薬です。
02
インスリン分泌を促す薬
*GLP-1受容体作動薬(薬剤:リベルサス、ビクトーザなど)
インスリン分泌促進および食欲抑制や胃排泄抑制の作用をもっています。単剤で低血糖のリスクが低く、高齢者、腎機能低下者でも使用できるメリットがあります。薬剤として内服薬と注射薬があります。
*DDP-4阻害薬(薬剤:トラゼンタ、ジャヌビアなど)
血糖依存的インスリン分泌促進し、血糖を下げます。単剤で低血糖のリスクが低いです。広く使われています。
*スルホニル尿素薬(薬剤:グリメピリドなど)
膵臓に働きかけ直接インスリン分泌を促し、血糖を下げます。血糖低下作用が大きいですが、低血糖のリスクも大きい、特に腎機能が低下している時は要注意です。
*グリニド薬(薬剤:ミチグリニドなど)
すい臓に直接はたらき、短時間だけインスリン分泌を促進、血糖を下げます。効果が現れてくる早いので、食事直前に内服します。
03
その他の作用によるお薬
*α-グルコシダーゼ阻害薬(薬剤:ミグリトールなど)
小腸から糖分の吸収を阻害、血糖を改善します。一部の患者様に下痢や便秘、お腹の張り、放屁の副作用があります。
*SGLT2阻害薬(薬剤:ジャディアンスなど)
尿から糖排泄を促進して血糖を下げます。体重管理に役に立ちます。腎臓と心臓に保護的な作用があります。副作用として脱水、尿路感染症への注意が必要です。
*イメグリミン(ツイミーグ)
ミトコンドリア機能活化によって、膵臓からインスリン分泌促進と肝臓や筋肉のインスリン抵抗性を改善します。
*マンジャロ
HbA1c低下効果と強い体重減少効果がもっている薬剤です。
インスリン分泌促進作用や食欲抑制作用によって上記の効果を発揮します。週に1回、ご自身で皮下注射する形で投与となります。
HbA1cが下がらず、体重減少に苦労されている糖尿病の患者様にとって非常に期待の持てる薬剤と考えられます。
04
インスリン(薬剤:トレシーバ、ヒューマログなど)
作用時間と薬力学によって持続型、速効型、混合型、中間型のインスリン大別にされています。
どんな人にインスリン療法が必要でしょう?
- 1型糖尿病
- インスリン分泌が低下している2型糖尿病
- 重度な肝機能障害があるとき
- 血糖値はかなり高い、糖毒性を取り除く必要があるとき
- 飲み薬を飲んでも血糖コントロールが不十分なとき
- 糖尿病以外の病気(感染症など)にかかったとき
- 妊娠を希望するときや授乳中手術の前後
糖尿病患者のシックディ
風邪や胃腸炎などで発熱、食欲不振、嘔吐、下痢で食事がいつも通りに食べられない時、けがなどでストレスが生じたり時に、血糖コントロールが難しくなります。低血糖と激しい高血糖にならない事に注意して、なるべくお早めに医療機関を受診してください。
食事まったく撮れない時:
- 飲み薬:服用しない
- GLP-1受容体作動薬:注射しない
- 持続型インスリン:特に1型糖尿病の方は中断しないです。
糖尿病の病型にかかわらず、できる限り血糖値を測り、用量の調整が必要です。 早めに病院を受診してください。
低血糖
低血糖とは
血液の中にブドウ糖が少なくなりすぎた状態で、血糖が70㎎/dl以下です。
低血糖になりやすい時
- 食事がいつもより少ない、食事時間が遅くなった時
- 食事が十分とれないのに、薬がいつものように内服した時
- 食事直前の飲み薬やインスリンの使用は、タイミングが間違っていた時
- 活動量が多すぎる時
- 空腹時に過量の活動した時
低血糖の対処法
- 手に入れる食べ物、甘いもの、ジュースなど直ぐに摂りましょう。
- ブドウ糖10~20gや砂糖:血糖を上げるのが速いです。勧め致します。
- 飴やチョコレート:消化に時間がかかりますが、血糖を上げます。
- 甘いものがない時、なんでも良いので食べ物を取るようにお願い致します。消化やすいため良く嚙んで食べてください。
- 時間が経っても低血糖が繰り返す時は、糖分と一緒にクッキーや乳製品や食事をとってください。医療機関を受診してください。
- 意識がなくなり、食べたり飲んだりができない時、周りの方が救急車を呼んで医療機関が対応してもらいましょう。
災難時への備え
自分の情報をまとめましょう
かかりつけ医療機関名、薬局名、電話番号、薬の名前、疾患名・糖尿病型、血糖コントロールの状況(HbA1cなど) アレルギー・副作用のある薬。
非常用持ち出し袋に入れるものを確認しましょう
- 飲み薬 1週間分
- インスリン 各種類1本ずつ、自己注射用針
- 薬手帳の写し
- 糖尿病連携手帳の写し
- 自己血糖記録ノートの写し
- ブドウ糖(低血糖対策)
- 非常用食(飲料水、食事)
糖尿病教室
糖尿病の治療には食事や運動を含めた日常生活全般の改善が必要です。患者さんが医師、看護師と一緒に一つのチームです。チームとしての努力が不可欠です。病気に関する知識を持ち、治療に向き合い、治療効果を出しやすいでしょう。
しかし、診察時間は限られているため、詳しい説明を足りなかったこともあります。患者様が知りたい事を聞けなかったこともあるかもしれません。そのため、月に一度、糖尿病教室を行うことを企画しています。
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